在宅薬剤師とは？
薬剤師の仕事は病院や調剤薬局だけではありません。近年では在宅医療が注目されており、薬剤師の中にも「在宅薬剤師」として活躍している人がいます。まだ馴染みの浅い働き方のため、ここでは在宅薬剤師の仕事内容や必要となる能力などを紹介。薬剤師の新たな働き方をチェックしておきましょう。
在宅薬剤師とは
在宅薬剤師とは、在宅医療・介護を利用している患者の自宅に訪問して業務を遂行する薬剤師のことです。医療機関や調剤薬局、ドラッグストアなどで働く薬剤師は来客した患者に対して処方・服薬指導を行いますが、在宅薬剤師は患者の自宅にて薬剤の提供・管理、健康相談などを行います。
高齢化を原因とする在宅医療の需要向上に伴い、薬剤の管理や服薬指導を担当する薬剤師も在宅医療への参入が強く求められているのです。
在宅薬剤師の業務内容
薬剤管理や服用指導
在宅医療を実施している患者の自宅や施設へ赴き、医薬品を提供したり管理したりする「訪問薬剤管理指導」が在宅薬剤師の主な仕事です。また、自ら医薬品を取りに行けない患者にとって、自宅へ直接薬を届けてもらえるのは非常にありがたいサービスだといえるでしょう。
なお、薬剤師が在宅薬剤師として活躍するためには、勤務先の薬局が在宅訪問に対応しているのが条件です。ここからは、訪問薬剤管理指導に対応している薬局における在宅薬剤師の仕事内容を、具体的に紹介していきます。
薬剤管理や服用指導
在宅薬剤師にとってメインの仕事となるのは、薬剤管理や服用指導でしょう。薬剤の適切な保管は高齢者にとって難しい場合があります。身体機能や認知機能の低下によって薬を管理できない、薬の効果や服用方法をよく理解しないまま飲んでいる人もいるかもしれません。
また、高齢者は症状ごとに複数の医療機関を受診するケースも多く、薬の飲み合わせによっては相互効果が現れる可能性があるでしょう。そのため、在宅薬剤師は飲み合わせや食べ合わせ、服薬方法を指導して、安全に薬を使えるようサポートします。
さらに、飲み忘れを防ぐカレンダーの提供や嚥下障害によってうまく薬が飲めない場合の対処、複数の薬の整理など、患者さんの健康を多角的に支えるのも在宅薬剤師の仕事です。
在宅薬剤師に資格は必要？
在宅薬剤師として活躍するには、薬剤師資格の他に「在宅療養支援認定薬剤師」という資格の取得が推奨されています。一般社団法人日本在宅薬学会の認める資格制度で、在宅医療における知識・技能・態度を身に付けられるのが特徴です。また、緩和ケアの知識を習得できる「緩和薬物療法認定薬剤師」の資格も、薬の安全な取り扱いにおいて重要な資格といえます。
どちらの資格も必須ではありませんが、在宅薬剤師の仕事は一般的な薬剤師の業務とは異なるため、推奨されている資格を取得しておいて損はないでしょう。
在宅薬剤師に必要な能力
薬剤師資格さえ持っていれば在宅薬剤師になれますが、患者の自宅へ訪問して薬の指導を行うには、それなりの経験やコミュニケーション能力が必要です。ここからは在宅薬剤師にとって資格以外に必要な能力をチェックしていきましょう。
薬剤師の経験
待ち時間の短縮を意識する調剤薬局では、いかに早く業務をこなせるかが評価につながります。しかし、在宅薬剤師の仕事では、業務スピードよりも「患者の状況に合わせて丁寧かつ正確に薬剤管理や服薬指導ができるか」が重視されるでしょう。
そのためには患者の生活面にもある程度踏み込んだ対応が必要。生活スタイルや患者を取り巻く環境を考慮したアドバイスが欠かせないので、薬剤の知識だけでなく医療従事者としての経験も必要です。
コミュニケーションスキル
在宅医療はチーム医療でもあり、医師や訪問看護師などと連携を取りながら患者をサポートします。患者の情報は連絡ノートや電子カルテ、電話などで共有するケースがほとんどです。他のスタッフと直接顔を合わせずにやりとりをする場面が多くみられるので、口頭で分かりやすい説明ができる、チーム間でしっかりと意思の疎通ができるかが重要になります。
また、患者と適切なコミュニケーションを取れるかも、非常に重要なポイントです。コミュニケーション能力が高ければ、薬に関する不安や質問はもちろん、ちょっとした変化にも気付けるようになるでしょう。
まとめ
患者のもとへ足を運び、薬の管理や服薬指導などを行う在宅薬剤師。在宅医療を支えるための知識やスキルを持っているかがポイントとなるため、有効な資格を取得するのも良いかもしれません。また、資格勉強だけでは身に付かない経験やコミュニケーション能力も欠かせないので、これまでの経験を活かしたい人にもおすすめです。
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